プログラムは、著作物ですので、著作権によって保護されます。ただし、プログラム著作権の場合、他の著作物の著作権とは異なる取り扱いを受けます。以下、プログラムの著作権についてまとめました。
1.著作物としてのプログラム
著作権法上の「プログラム」は、電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう(法第2条第1項第10号の2)。著作権法上の「プログラム」は著作権法で保護される(法第10条第1項第9号)。
言語(プログラミング言語)、規約(プロトコル、インタフェース)、解法(アルゴリズム)は著作権法で保護されない(法第10条第3項)。
マージャードクトリン(merger doctorine)・・・ノウハウ・アイデアと表現とが切り離せない場合には、その表現は著作権で保護されない。
きわめてありふれた短いプログラムは、保護対象とはならない(植村p30,31)。
フォント(書体の形状自体)は、原則、保護対象外(最高裁H12.9.7-H10(受)332号)。なお、デジタルフォント(いわゆるフォントプログラム)は、著作物に該当する。
具体化されたものの例
- バイナリ形式・・・実行形式ファイル、オブジェクトファイル、ライブラリファイル
- テキスト形式・・・ソースファイル、スクリプトファイル
- インストール用ファイル(圧縮されたファイルその他)
- なお、取扱説明書、仕様書等は、プログラムとは別の著作物として保護される。
2.プログラムの著作権(人格権・財産権)の原始取得者
プログラマーが、通常、そのプログラムの著作権の原始取得者となる。
共同著作物の場合、二人以上の者が共同著作者となる。「共同著作物」とは、二人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用できないものをいう(法第2条第1項第12号)。
コンピュータ処理による創作物については、新たな創作者は発生しない。例えば、自動翻訳の場合には、元の文書の創作者が、翻訳後の文書の創作者となる。
従業員によるプログラム著作物の場合
- 従業員による職務著作の場合には、使用者の著作となり、雇用者である法人等が創作者となる(法第15条第2項)。つまり、雇用者が著作権を有する。なお、著作権法上の「法人」には、法人格のない財団・社団で代表者又は管理人の定めがあるものも含まれる(法第2条第6項)。
- 契約・勤務規則等で別途取決めがある場合には、使用者の著作とならない(法第2条第6項)。
- 派遣された人員が創作した場合には、派遣先の著作となるかは微妙なところ(作花p68,69)。
委託により作成されたプログラム著作物の場合
- 委託により作成されたプログラムの著作権は、原始的には、受託者が有する。このため、契約等で受託者から委託者への著作権(財産権)の移転が行われることが多い。
3.プログラム著作物の二次的著作物
二次的著作物としては、翻訳、翻案により得られたものがある。
二次著作物に該当するか否かの判断は、(1) 同一性・実質的類似性、及び(2) アクセス可能性、で判断される(植村p98)。
ソースファイルをコンパイラでコンパイルしたオブジェクトファイルは、翻訳による二次著作物と考えられるが、新たな創作者は発生しないため、複製と考えられることがある。ソースファイルとオブジェクトファイルが一対一対応である場合には、複製と考えられるが、コンパイラによって生成されるオブジェクトファイルの内容が異なるため、翻訳と考えるのが妥当か。
他のプログラミング言語への変更は、翻訳と考えられる。
メジャーなバージョンアップは、翻案と考えられる場合が多い。
別種のコンピュータシステムへの移植は、翻案となる可能性が高い。
4.プログラム著作物の登録
登録対象
(1)「創作年月日」(法第76条の2),(2)「第一発行(公表)年月日」(法第76条),(3)「著作権」(法第77条),(4)「実名」(法第75条)
登録要件
(1)「創作年月日」については、創作年月日から6月経過するまでに登録。(2)「第一発行(公表)年月日」・「実名」については、公表後。
登録の効果
- 「創作年月日」,「第一発行(公表)年月日」の推定。「実名」の登録による著作者の推定。
- 「著作権」の登録による著作権の移転、質権についての第三者対抗要件(法第77条)。
登録手続
- 法第78条の2及び「プログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律」にて規定されており、財団法人ソフトウェア情報センター(SOFTIC)が登録機関に指定されている。詳しくは、SOFTICのウェブページ(http://www.softic.or.jp)。
- 次の資料が必要。ただし、「創作年月日の登録」以外の登録の場合は追加資料が必要。(1)申請書,(2)明細書,(3)プログラム著作物の複製物(マイクロフィッシュで作成),(4)登録手数料納付書,(5)収入印紙,(6)代表者資格証明書(法人の場合) なお、(2)と(3)は、そのプログラム著作物の初回申請時にのみ必要。
5.具体的な行為の侵害性
- リバースエンジニアリング ・・・リバースエンジニアリングは、複製等にあたらないため、著作権の侵害行為とはならない(作花p221, 植村p217)。
- インストール ・・・インストールは複製にあたるため、複製権のないインストールは侵害行為となる(作花p267)。
- バックアップディスクの作成・保存 ・・・バックアップディスクの作成・保存は例外的に許される。ただし、バックアップディスクを紛失した場合、オリジナルの保存は複製権の侵害となる(法第47条の2第2項)。オリジナルを譲渡した場合、バックアップディスクの保存は侵害行為となる(植村p117)。
- 一時的蓄積 ・・・一時的蓄積が侵害に該当するか否かは明確ではない(著作権審議会国際小委員会報告書H12.11)。判例は発見できず。法第47条の2第1項は「プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の複製を含む。)をすることができる。ただし、当該利用に係る複製物の使用につき、第百十三条第二項の規定が適用される場合は、この限りでない。」としている。したがって、正規購入したソフトウェアをインストールする行為、及びそのインストールされたプログラムをメモリにロードし実行する行為は許容されると考えられる。
- スタティックリンクによるライブラリの使用 ・・・スタティックリンクの場合、実行形式ファイル内にライブラリのコードが取り込まれる。このため、ライブラリをスタティックリンクで使用して実行形式ファイルを作成する行為は、ライブラリ内のコードの複製と考えられる。
- ダイナミックリンクによるライブラリの使用 ・・・ダイナミックリンクの場合、実行形式ファイルが実行される際にライブラリのコードがロードされる。この場合、実行形式ファイルには、ライブラリのコードは含まれない。したがって、ライブラリをダイナミックリンクで実行時に使用する実行形式ファイルを作成する行為は、ライブラリ内のコードの複製とは考えられない。その実行形式ファイルを実行すると、ライブラリファイル内のコードがメモリにロードされるが、現時点の日本では、メモリへのロードが複製に該当するか否かは明確ではない(著作権審議会国際小委員会報告書H12.11)。
6.ライセンス契約
- 契約時の注意点としては、著作権財産権については、許諾条項を設ける。著作権人格権については、不行使特約を設ける(植村p86)。
- シュリンクラップ契約・・・パッケージソフトで、封を破ったときに契約を成立したとするもの。契約の成立に問題がある。判例はない。
- クリックラップ契約(クリックオン契約)・・・プログラムのインストール時や起動時に契約条項および「同意する」等のボタンを表示し、そのボタンをユーザが選択操作した場合のみ、プログラムがインストールされたり起動したりするようにしたもの。判例はないが、契約としては有効であると考えられているようである。
- GPL(General Public License)・・・フリーソフトウェアの使用許諾形態の一種。主にGNU(Gnu's Not Unix)によるプログラムに付されている。GPLでは、著作権を放棄しない旨を表明し、一定の要件を満たす場合には、原著作物を使用しても著作権を行使しないとしている。要件としては、(1) ソースリストの公開、(2) GPLの付されたプログラムを使用して生成された派生物についてはGPLを付すこと、などがある。詳しくは、GPLのウェブサイト(http://www.gnu.org/copyleft/gpl.html)へ。GPLの条文(英文)も開示されている。非公式日本語訳も公開されている。もともと米国で書かれたもので、日本の著作権法の観点からは、いくつかの問題がある(ダイナミックリンクによるライブラリの使用など)。
- クリエイティブコモンズ・・・ウェブで公開する自分のコンテンツについて「All rights reserved」ではなく「Some rights reserved」としたい場合に、クリエイティブコモンズのウェブサイト(http://www.creativecommons.jp/)を使用して、許諾範囲の明示を簡単化できる。自分のコンテンツをクリエイティブ・コモンズとしてウェブで公開する際に、(1) 「帰属表示(Attribution)」、(2) 「非商用利用(Non-commercial)」、(3) 「改変の禁止(No Derivative Works)」、(4) 「共有条件の継承(Share Alike)」のそれぞれについて許諾するか否かを選択する。
7.参考文献
- (作花)--「著作権法」(作花文雄著、発明協会)
- (植村)--「コンピュータプログラム著作権Q&A」(植村宏嘉著、金融財政事情研究会)
- 財団法人ソフトウェア情報センター(SOFTIC)のウェブページ(http://www.softic.or.jp)
- 著作権審議会国際小委員会報告書(平成12年11月)
(Aug,2004-May11-Jul19-Jul25,2005-Apr01,2006-Oct15,2008 Revised)